9_ウイスキーの製造工程(カット)

基礎知識 製法

【工程6】ウイスキー製造におけるカットの詳細解説

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カットとは何か?3つの区分

蒸留器から得られる液体(スピリッツ)は、時間経過とともに成分が変化します。この変化に基づいて、以下のように分けられます。

1. ヘッド(前留)

  • 特徴: 蒸留の最初に得られる液体で、アルコール濃度が高い(80%以上)。アセトンやメタノールといった揮発性の高い成分を多く含みます。
  • 風味への影響: ヘッドを採取すると、ウイスキーに刺激的な香りや不快な味が残る可能性があります。
  • 用途: 通常は廃棄されるか、次回の蒸留に再利用されます。

2. ハート(ミドルカット)

  • 特徴: 蒸留の中間部分で、アルコール濃度が約65〜72%。ウイスキーの香りと味わいの中心となるエステル、フェノール、アルデヒドなどが含まれています。
  • 風味への影響: ハート部分を適切に採取することで、ウイスキー特有の香りや味わいが形成されます。

3. テイル(後留)

  • 特徴: 蒸留の終盤に得られる液体で、アルコール濃度が低い(40%以下)。フェーゼル油や他の重い成分を多く含みます。
  • 風味への影響: テイルを採取すると、ウイスキーが重たく、オイリーな風味になります。
  • 用途: 一部は再蒸留されることもありますが、通常は廃棄されます。

カットのタイミングと方法

感覚的判断

  • 視覚: 液体の透明度や泡立ちを観察。
  • 香り: ヘッド部分の化学的な香り、テイル部分の重い香りを検知。
  • 味覚: 液体を味見し、適切なカットポイントを見極める。

機械的判断

  • 温度センサー: 蒸留器内の温度を監視し、成分が蒸発するタイミングを把握。
  • アルコール濃度計: 蒸留液のアルコール度数をリアルタイムで測定し、カットポイントを正確に設定。

蒸留所ごとのカットの特徴

スコットランド(シングルモルト)

バランスの取れたカット幅を採用し、風味の多様性を重視。

  • グレンフィディック: 狭めのカット幅で、クリーンでフルーティーな酒質を形成。
  • ラフロイグ: 広いカット幅を採用し、ピート香と重厚な味わいを強調。

アイルランド(アイリッシュウイスキー)

3回蒸留を行うことで、スムースで軽やかな味わいを実現。

  • ジェムソン: 狭いカット幅と3回蒸留を組み合わせ、スムースな仕上がり。

アメリカ(バーボン)

連続式蒸留を採用するため、カット幅は比較的広い。

  • メーカーズマーク: しっかりとした甘さとバニラの香りが特徴。

カット幅がウイスキーに与える影響

狭いカット幅

クリーンで洗練された味わい。

広いカット幅

重厚で複雑な味わい。

最新技術によるカットの進化

伝統的な手法に加え、最新技術を用いたカットの精密化が進んでいます。

  • AI活用: 蒸留液の成分分析をリアルタイムで行い、最適なカットタイミングを自動判断。
  • 自動モニタリング: 温度、アルコール濃度、香味成分の動向を常時監視。

まとめ:ウイスキー製法におけるカットの重要性

ウイスキー製造におけるカットは、香味や品質を形作る最も重要な要素のひとつです。蒸留技師のスキルとモニタリング技術の融合により、ウイスキーの多様性と個性が生まれます。次回ウイスキーを味わう際には、この「カット」の役割に思いを馳せながら楽しんでみてください。

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WhiskyWorld編集局

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WhiskyWorld編集局では、ウイスキー試飲数1000本を超える元バーテンダーがウイスキーに関する情報を発信しています。ウイスキー検定2級(1級挑戦中)

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