8_ウイスキーの製造工程(ディスティレーション)

基礎知識 製法

【工程5】ウイスキーの製法:ディスティレーション(蒸留)

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ディスティレーション(蒸留)の詳細解説

ディスティレーション(蒸留)は、発酵液からアルコールと香味成分を抽出し、ウイスキーの個性を形成する製造工程の中核を担うプロセスです。この工程では、発酵液(ウォッシュ)を蒸留器で加熱し、エタノールを含む揮発性の成分を抽出し、高濃度のアルコール液を得ることが目的です。

蒸留の基本原理

蒸留は、エタノールと水の沸点差を利用してアルコールを濃縮するプロセスです。エタノールの沸点は約78℃、水の沸点は100℃であり、この差を利用してアルコールと香味成分を分離します。ウォッシュを加熱することで、エタノールや揮発性の高い成分が先に蒸発し、冷却・凝縮することでアルコール濃度を高めることが可能です。

蒸留回数を増やせばアルコール度数を高めることは可能ですが、スコッチウイスキーの製造では通常2回蒸留が行われ、最終的にアルコール度数65〜72%程度のニューメイクスピリッツが得られます。

蒸留の工程

1. 初留(ファーストラン)

初留では、発酵液(ウォッシュ)をウォッシュスチルと呼ばれる蒸留器で加熱します。この工程で得られる蒸気を冷却して液化することで、「ローワイン」と呼ばれるアルコール度数20〜25%の液体が得られます。

  • 目的: ウォッシュからアルコールと主要な香味成分を抽出。
  • 残液の再利用: 蒸留器に残る「ポットエール」は、家畜飼料(ダークグレーン)として利用されます。

2. 再留(セカンドラン)

再留では、ローワインを再び加熱し、より高濃度のアルコールを含むニューメイクスピリッツを得ます。この工程では、「ヘッド(前留)」「ハート(ミドルカット)」「テイル(後留)」に分けられます。

  • ミドルカット: 品質を安定させるため、揮発性の高い成分(ヘッド)と揮発性の低い成分(テイル)を除去し、アルコール度数65〜72%のハート部分を採取します。

蒸留器(ポットスチル)の種類と特徴

蒸留器の形状やサイズは、ウイスキーの香りや味わいに直接影響を与えます。以下に代表的なポットスチルの種類を挙げます。

  • ストレート型: 滑らかな形状で、バランスの取れた風味を生む。
  • ランタン型: ネック部分が広がり、軽やかでクリーンな酒質を生成。
  • バルジ型: 胴体に膨らみがあり、蒸気の還流を促し、複雑でリッチな風味を生む。
  • オニオン型: 丸みを帯びた形状で、柔らかく滑らかな味わいを形成。

銅製の蒸留器は、硫黄化合物を吸収し不快な香りを取り除く役割も果たします。これにより、ウイスキーの香味が向上します。

加熱方式と冷却方式

加熱方式

  • 直火加熱: 強い火力で蒸留器を直接加熱する方法で、リッチで力強い酒質が得られる。
  • 間接加熱: 蒸気を用いて穏やかに加熱する方法で、スムースで軽やかな酒質が得られる。

冷却方式

  • ワームタブ(蛇管式冷却器): 伝統的な方法で、重厚な風味を生成。
  • シェル&チューブ: 効率的に冷却し、軽やかでフルーティーな風味を生成。

蒸留回数とウイスキーの種類

  • 2回蒸留: スコッチウイスキーに多く見られ、複雑で深みのある風味が特徴。
  • 3回蒸留: アイリッシュウイスキーに多く、スムースで軽やかな味わいを生む。

蒸留がウイスキーの風味に与える影響

  • 蒸留器の形状: 背が高い蒸留器は軽やかな酒質、背が低い蒸留器は重厚な酒質を生成。
  • 蒸留速度と温度管理: ゆっくりとした蒸留は滑らかで複雑な味わいを生み、速い蒸留は力強い風味を形成。

具体例:蒸留所ごとの特徴

  • マッカラン蒸留所: 小型ポットスチルを使用し、濃厚で重厚な酒質を追求。
  • ラフロイグ蒸留所: ワームタブ冷却器を採用し、ピート香を最大限引き出す。
  • レッドブレスト: 3回蒸留で滑らかでエレガントな味わいを実現。

まとめ:(蒸留)ディスティレーションの重要性

蒸留は、ウイスキーの品質と個性を決定する重要な工程です。蒸留器の形状やサイズ、加熱・冷却方式、蒸留回数といった要素が複雑に絡み合い、最終的なウイスキーの風味を形成します。各蒸留所の伝統や技術、そして環境が生み出す独自性こそ、ウイスキーが世界中で愛される理由のひとつです。

次にウイスキーを楽しむ際には、蒸留工程がもたらすその深みを感じながら味わってみてはいかがでしょうか。

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WhiskyWorld編集局

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WhiskyWorld編集局では、ウイスキー試飲数1000本を超える元バーテンダーがウイスキーに関する情報を発信しています。ウイスキー検定2級(1級挑戦中)

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