7_ウイスキーの製造工程(フォーメンテーション)

基礎知識 製法

【工程4】ウイスキーの製法:フォーメンテーション(発酵)

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ファーメンテーション(発酵)とは?

発酵工程の目的と役割

ファーメンテーション(発酵)は、糖化工程で得られた糖液(ウォート)に酵母を加え、糖類をエタノールに変換する工程です。アルコール発酵とともに、エステル、酸、カルボニル化合物など、ウイスキー特有の香味成分が生成されます。

ウォートからウォッシュへの変化

発酵の結果、アルコール度数7〜9%程度の液体「ウォッシュ」が得られます。このウォッシュは、次の蒸留工程で使用される原料となり、発酵時に形成された香味成分がウイスキーの個性を左右します。

ファーメンテーションの詳細な工程

1. 酵母添加と増殖期

酵母の投入

ウォートに酵母を投入すると、酵母が糖類を利用して急速に増殖します。この段階では糖だけでなく、アミノ酸も消費され、酵母が発酵槽内で支配的な存在となります。

環境の調整

酵母が優位に働く環境を作るため、発酵槽は最適な温度(約30〜35℃)と酸素供給を維持します。酸素は酵母の増殖期における細胞分裂を助ける重要な要素です。

2. 発酵最盛期(アルコール発酵のピーク)

発酵の進行

酵母がエタノールと二酸化炭素を生成する速度が最も高くなるのが発酵最盛期です。この段階では、糖類のほとんどがアルコールに変換され、発酵槽内は激しく泡立ちます。

温度と泡切り

発酵により生成される熱が槽内の温度を上昇させるため、適切な温度管理が必要です。また、泡切り用のスイッチャー(回転ブレード)で泡を潰し、発酵槽の圧力を安定させます。

3. 酵母死滅期とその後の微生物活動

酵母の減少

発酵最盛期を過ぎると、酵母の活性が低下し、死滅が始まります。この時点でアルコール濃度が約7〜9%となり、アルコールに耐性のない微生物は減少します。

乳酸菌の活動

酵母が使い切れなかった非発酵性糖類を乳酸菌が利用して乳酸を生成します。乳酸は蒸留工程で銅製ポットスチルを保護し、クリーンな蒸留を可能にする役割を果たします。

発酵槽(ウォッシュバック)の構造と役割

材質による違い

木製ウォッシュバック

オレゴンパインやダグラスファーで作られる木製発酵槽は、温度を適度に維持し、蒸留所ごとの微生物環境を反映したユニークな香味を生み出します。

金属製ウォッシュバック

ステンレス製の発酵槽は洗浄が容易で、発酵の均一性が確保されます。これにより、一定の品質が保証され、管理がしやすくなります。

発酵がウイスキーの味わいに与える影響

微生物の地域性と独自性

発酵中に作用する微生物(酵母や乳酸菌)は蒸留所ごとに異なり、その地域特有の環境がウイスキーの個性に寄与します。例えば、アイラ地方の蒸留所では独特のピート香が、スコットランド本土の蒸留所ではフルーティな香りが特徴的です。

まとめ:ファーメンテーションの重要性

ファーメンテーションは、ウイスキー製造における重要なプロセスであり、香味の多くがこの工程で形作られます。酵母の選択、発酵時間、環境管理がすべて組み合わさり、ウイスキーの品質と個性を支えています。

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