6_ウイスキーの製造工程(マッシング)

基礎知識 製法

【工程3】ウイスキー製法の糖化(マッシング)

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糖化(マッシング)とは?

糖化(マッシング)は、ウイスキー製造において麦芽のデンプンを糖類に変換し、発酵に必要な糖液(ウォート)を抽出する工程です。このプロセスは、ウイスキーの品質と味わいを左右する重要なステップです。

  • 糖類の抽出:発酵の材料となる糖類を効率よく得る。
  • 固形成分の濾過:水に溶けない成分を除去し、透明度の高いウォートを生成する。

1. モルトの粉砕:糖化の準備

糖化の第一歩は、乾燥した麦芽(モルト)を粉砕することです。この作業では、モルトミルを使用して粉砕物(グリスト)を得ます。粉砕されたグリストは粒の大きさによって以下の3つに分類され、それぞれの役割があります。

グリストの分類と役割

  • ハスク(Husk):外皮部分で、濾過時にフィルターの役割を果たします。
  • グリッツ(Grits):糖化の主成分を担い、酵素が効率よく働きやすい粒。
  • フラワー(Flour):細かい粉で、糖化効率をさらに高める。

理想的な比率は「ハスク20%:グリッツ70%:フラワー10%」で、このバランスが糖化効率と濾過性能を両立させます。

2. 糖化プロセスの詳細

温水との混合

粉砕されたグリストは約65℃の温水と混合され、糖化槽(マッシュタン)に投入されます。この温度は、麦芽中の酵素(アミラーゼ)が活性化し、デンプンを糖類に変換するのに最適な条件です。

攪拌と糖化

糖化槽内では攪拌装置(レーキ)で内容物が均一に混合されます。攪拌することで酵素が効率的にデンプンに作用し、糖化が進みます。この過程で得られる糖類は以下の2種類です:

  • 発酵性糖類:アルコール発酵の主原料(例:グルコース、マルトース)。
  • 非発酵性糖類:ウイスキーの甘みやコクを生む成分(例:デキストリン)。

3. ウォートの抽出と濾過

一次濾過

マッシュタンの底部に設置されたロイター板(濾過板)を使用して、糖度の高い「一番麦汁」を抽出します。この液体は発酵工程で最も重要な役割を果たします。

二次・三次濾過

一番麦汁を抽出した後、温水を加えて二番麦汁や三番麦汁を抽出します。この工程により、糖類を最大限に回収することが可能です。一次と二次の麦汁を混合すると、糖度約13~14度のウォートが得られます。

4. ウォートの冷却:発酵準備

熱交換器による冷却

抽出されたウォートは、熱交換器を使用して約20℃まで冷却されます。この温度により、酵母が適切に発酵を行える環境が整います。

発酵槽への移行

冷却されたウォートは発酵槽(ウォッシュバック)に送られ、次の発酵工程に移ります。

5. 糖化に使用される機器の特徴

モルトミル

モルトミルは、粒のサイズを調整できるローラーミルが主流です。この機器を使用することで、濾過効率を向上させながら糖化効率を最大化できます。

マッシュタン

マッシュタンは糖化槽として、攪拌装置やロイター板を備えています。一部の装置では攪拌装置が上下に動き、濾過の精度を高めます。

まとめ

糖化(マッシング)は、ウイスキーの品質を決定づける重要な工程です。デンプンの糖化効率やウォートの濾過性能、温度管理など、すべての要素がウイスキーの味わいに直結します。ウイスキーの深みを知る上で、この糖化プロセスを理解することは不可欠です。

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WhiskyWorld編集局

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